萌の朱雀

  • Day:2008.01.07 20:21
  • Cat:映画
今年は書評と映画評になってしまいそうな予感です。
これも花を咲かせるための肥やしと思っていただければ…。

河瀬直美監督の35㎜初作品です。
物語は、奈良の山奥に住む少々家族構成の変わった一家の出来事です。
おばあさんと息子(父)、嫁、孫娘に、嫁と孫の中間ぐらいの年の青年(実はおばあさんの娘の子)が、眺望の素晴らしい家に住んでいます。父親はどうやら鉄道誘致に熱心で、その計画が頓挫したことから行方をくらましてしまいます。青年は嫁さんに、孫娘は青年に恋心をいだいていて、お互いにそれが分かっていますが、どうすることもできません。母子は実家に帰ることになり、出発の朝、父の撮った8ミリフィルムを見ることになります。そこに映っていたものは、木々の緑、水辺の光、近所の爺さん婆さんの笑顔でした。見送るとき、青年は母子と長い長い握手をします。

と、ストーリーを書くと、一応ドラマチックなことが起こっていますから、作ろうと思えば涙腺を刺激する映画にできなくはありません。でも、河瀬監督はそうしませんでした。

徹底してストーリーの分かりやすさを拒絶した映画です。
でも退屈はしません。情感のにじみ出るシーンがいくつもあるからです。ファーストシーンの台所でのおばあさんと嫁の後姿、老人ホームへ行くことになった隣家のおじいさんの深々と下げられた頭、泣きながら坂道を降りていく嫁。

河瀬監督は、いつか見た情景、脳裏に焼きついて離れない場面を映像化したかった、そしてそれらをつないで一応のストーリーをつけたんではないかと思います。ストーリーに収まりきらなかったシーンを遺留品の8ミリフィルムに焼き付けたのではないか。それらを観客と共有したかったのではないかと。

忘れられないシーンがあったら、監督の狙い通りです。

萌の朱雀萌の朱雀
(2007/09/25)
國村 隼.尾野真千子.和泉幸子.柴田浩太郎.神村泰代.向平和文.山口沙弥加 他

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