公益法人の事業仕分け

  • Day:2010.05.23 20:39
  • Cat:時事
この金曜日から始まった公益法人(一部特別民間法人)を対象にした仕分けには考えさせられる。公益法人制度改革と絡んでいるため、少々勉強してみた。

疑問点は次の二つ。
1.役員の高額報酬は是正されるのか?
2.財産の過大分を国庫返納させることができるのか?

まずざっくりと公益法人制度のおさらいをする。

2008年11月末までに設立された公益法人は、改正前の民法34条に基づいて設置された、社団法人と財団法人であるが、国または都道府県の許可が必要だった。この仕組みは、役所と公益法人の癒着を生み、天下りと引き換えに随意契約でぼろい仕事を貰うという弊害を生んだ。

現在では営利を目的としない(構成員が給与を貰ってもかまわないが利益を分配をしてはいけない、つまり民間企業の株式配当や特別賞与のようなものはだめ)法人を、登記だけで設立できることになった。これが一般社団法人と一般財団法人。このうちさらに、公益を目的としていると認められると公益法人として税制上の優遇がなされる。認定するのは公益認定等委員会(国)か合議制の機関(都道府県)。

以前の公益法人は平成25年11月までに一般か公益かどちらかに申請しなければならない。それまでに認定されない、申請がないときは解散したものとみなされる。

※ ※ ※

面白いのは一般法人に申請した場合には、公益目的支出計画なるものを提出しなければならないこと。公益目的支出計画とは、移行時点の財産を基礎として算定したもの(公益目的財産額)を、ゼロにするまで公益事業に使う計画である。移行まで公益法人として税制上の優遇を受け蓄積してきた財産は、きちんと公益に使うようにということであろう。

公益法人に申請する場合にはもちろん、このような支出計画はない。しかし認定のハードルは高い。事業仕分けでは高額な役員報酬がさんざん取り上げられているが、公益法人認定法第5条には次のような規定がある。


十三  その理事、監事及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当をいう。以下同じ。)について、内閣府令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めているものであること。


つまり、例えば財団法人日本宝くじ協会の平均役員報酬が2000万円を超えていることが明らかになってみんなびっくりしているわけだが、この協会が公益財団法人に申請した場合、この条項がひっかかってくるだろうということが予想される(内閣府令がどんな額になるかわからないが)。

では、報酬に制限のない一般財団法人に申請すればいいのかというとそうでもない。宝くじの販売は本来犯罪である(刑法第187条「1富くじを発売したものは、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。2富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。3前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。」)。

それが、当せん金付証票法という法律によって認められている。発行主体は都道府県と特定市。協会はこの都道府県と特定市が作った公益法人である。単なる一般財団法人となった場合、都道府県・特定市が引き続き協会に業務を委託するとは思えない。また、そもそも一般財団法人への申請を認めないのではないだろうか。

つまり1.の問題については、内閣府令次第ということになろう。


もうひとつの財産の過大分の国庫返納である。例えば塩事業センターの評価結果には、「現在、積み立て
ている分の正味財産のうち、過大分を国庫返納していただきたい。」とある。これは可能なのか?

一般法人に移行したときには公益目的支出計画が作られることは上述の通り。もしもこれがゼロになる前に、この法人が解散する場合は、類似の目的を持つ公益法人等に譲渡することとなる。

公益法人に移行したときには、公益法人法第16条辺りが問題になってくる。

(遊休財産額の保有の制限)
第十六条  公益法人の毎事業年度の末日における遊休財産額は、公益法人が当該事業年度に行った公益目的事業と同一の内容及び規模の公益目的事業を翌事業年度においても引き続き行うために必要な額として、当該事業年度における公益目的事業の実施に要した費用の額(その保有する資産の状況及び事業活動の態様に応じ当該費用の額に準ずるものとして内閣府令で定めるものの額を含む。)を基礎として内閣府令で定めるところにより算定した額を超えてはならない。
2  前項に規定する「遊休財産額」とは、公益法人による財産の使用若しくは管理の状況又は当該財産の性質にかんがみ、公益目的事業又は公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務若しくは活動のために現に使用されておらず、かつ、引き続きこれらのために使用されることが見込まれない財産として内閣府令で定めるものの価額の合計額をいう。

あるいは、認定が取り消された時の第5条の規定。

十七  第二十九条第一項若しくは第二項の規定による公益認定の取消しの処分を受けた場合又は合併により法人が消滅する場合(その権利義務を承継する法人が公益法人であるときを除く。)において、公益目的取得財産残額(第三十条第二項に規定する公益目的取得財産残額をいう。)があるときは、これに相当する額の財産を当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与する旨を定款で定めているものであること。
(略)

ここで初めて国という言葉が出てくる。だが、どこに贈与するかを定款で決めるのは、当の法人であって、国が国庫返納を命じるというわけではない。

残るは行政指導である。しかし、行政指導は責任の所在をあいまいにしてしまうのでなるべく避けたいところだ。

2.の疑問についてはちょっとわからないというのが今日の結論。

※ ※ ※

公益目的支出額の算定は、正味財産を基礎とするとされている。ちなみに2日間の仕分け対象33公益法人の正味財産合計額は4718億円である。

※ ※ ※

一つだけ指摘したい。財団法人民間放送教育協会の仕分けで某仕分け人が、「生涯学習の番組を作るならNHK教育か放送大学に委託したほうがよいものができる」という趣旨のことをおっしゃった。つまり民間のプロダクションにはよいものはできないと受け止めたが、もしもそうであるならば、官尊民卑発言も甚だしい。

また、この回は仕分け人の勉強不足が目立った。民放で番組を放送するには番組制作費に加えて電波料が必要だということを知らなかったり、総務省と連携すればNHKで制作し流せるのではないかなどという的外れな指摘があった。後者は放送局の編集権に干渉するというものであろう。

ただ、「民放で同趣旨の番組が国費
なしで成り立っていること等を考慮すると、国費による番組制作を止め、民間に実施していただくこととする。」という評価結果は妥当だ。現在のテレビ放送が生涯学習に資する番組を十分流しているか否かは分からないが、国が番組を作る必要はないだろう。

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