事業仕分け(5)~民間委託したらコスト削減になるのはなぜ?

  • Day:2009.11.28 09:48
  • Cat:時事
一昨日の事業仕分け、防衛省の思いやり予算などの議論の過程で、こんな指摘があった。

「防衛省の自衛官増員をめぐる議論では、同省が定数削減で一部業務を民間委託したのに、委託費を人件費削減分と同額にしていたため、コスト削減につながらなかったことが判明。枝野幸男・民主党元政調会長は、全省庁に定数削減の効果の点検を求める考えを示した。」(読売)

蓮舫議員(第3ワーキンググループとりまとめ役)は、Twitterでこう呟いている。
「行革推進法に基き各省庁は国家公務員定数削減。でも、防衛省は21年度3713人削減、業務を民間委託したものの、実は人件費、物件費共に一円も安くならないアウトソーシングだったことが仕分け作業で判明しました。経費削減には全くならない。他の省庁にも同様の事例がないか新たな課題発見。」

正確には「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」という長ったらしい名前の法律だ。その第43条で、平成22年度の国家公務員の年度末総数を、平成17年度より5%削減することが決められている。

定員削減の手段として、民間委託(アウトソーシング)が行われている。そして、そうすることによってコスト削減・効率化が可能になるというのが半ば常識のように論じられている。

不思議だなあ、といつも思っていた。どうして民間委託するとコストが安くなるの?

なぜなら、その論理展開はこういうことだからだ。

1.公務員がやると高い。
2.民間がやると安い。
3.だからアウトソースしよう。

そこには、公務員の人件費は、民間より高くて当然だという開き直りがある。あるいは、公務員の仕事ぶりは民間より非効率だということを認めて恥じない態度が見える。

官が民間に委託する業務は以前からあった。道路や施設の設計・建設、システム開発などは官が自前の人材ではできない(あるいは抱えようと最初から思っていなかった)から、民間に発注してきた。そこでは、民間の競争を促進して落札価格を下げようという議論はあったが、これらを直営で実施した場合よりもコストが削減されるから民間に発注するという話ではなかった。

防衛省が民間委託した業務の内容は知らないが(この日はネットでの中継を聞けなかった)、行革推進法の5%削減に対応するには、多くの役所で、たぶんデスクワークの一部として従来事務方が行ってきた仕事を民間委託せざるを得ないと思う。

例えば「ロジスティックス」と呼ばれる手続き業務の部分、定型的な起案作業(起案者名はもちろん公務員)などである。では公務員は何をするかといえば、企画・立案など「サブ」と呼ばれる仕事だ。ロジは委託して、サブに特化しよう、という掛け声を思い出す。

もうひとつは、非正規職員を増やすことである。例えば一つの課のファイリングや出張手続きを一手に引き受ける。または窓口業務を委託する。これもロジ業務の切り出しと言っていいだろう。

昔の私の経験では、テレビディレクターとAD(アシスタントディレクター)の業務分担と思えばいいかもしれない。確かにADの給与はディレクターより安かった。

だからロジ業務を委託すればコスト削減につながるというのはある面では納得できる。でもADにはいずれディレクターになれるという夢があった。非正規職員にはそれがないのだから士気も自ずから違って来よう。また、手続きや窓口業務を経験しない(要するに現場を知らない)公務員に、よい企画・立案ができるかというとこれもまた疑問である(優秀なディレクターになるにはAD経験は不要だという人もいるのだが)。

話が横道にそれたが、官が民間委託を進めてコスト削減と効率化を実現するというときには、委託先にしわ寄せされるものが存在すると思う。

一例を考える。

委託ではなく行政処分だというが、自治体では指定管理者制度というのが大いに流行っている。

「公の施設の管理・運営を、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる制度である」(Wiki)

例えば市立の児童館があるとする。今までは直営で市職員3名が勤務していた。それに指定管理者制度を適用する。市内のNPOが手を挙げた。常勤職員を4名に増やし、土曜日も開館し、さらに閉館時間を7時から8時に延長した。住民は喜んだ。

この陰には明らかに、NPO職員の人件費が安く抑えられているという事実があると言ってよい。「NPOの資金づくりがわかる本!」で田中尚輝氏は、指定管理者となっているNPO職員の平均年収は150万円から200万円くらいだと述べている。さらに、これでは行政によるワーキングプアの創出だ、450万円は貰おうと呼びかけている。

これを尤もな話だと感じる方は、最初の疑問に共鳴してくださるだろう。

どうして民間委託するとコストが安くなるの?

定員削減のもっとも正しい解決方法は、民間に委託せずに、官内部の効率化を進めることで目標を実現することだろう。ほら、そこにほとんど働いていない人がいるじゃない。え?あの人に任せると余計仕事が増えるって?まさかそんな人にも勤続年数に応じた給与を払っているんじゃないでしょうねえ。

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