鬼泪山の論点整理

今日は忙しい。

一昨日土石審から帰宅後県保安課に資料をお願いしたところ、今日東京地裁から帰ってきたらもう届いていて感動。で、ざっと拝見して論点を整理する。

1.答申の整合性
直近に開かれた土石採取対策審議会(平成6年3月25日)の答申は、正式には「富津市桜井地先における砂利採取に関する答申」という。前回石井保安課長の発言として引用した部分は「君津地区に賦存している砂利は、本件の貴重な資源であることから、その採取に当たっては、本件の発展に関連の深いプロジェクトに使用するほか、地元事業者の育成という観点からの活用方策に配慮すること」とある。
その前の「富津市桜井地先における大規模砂利採取に関する答申」(昭和63年7月1日)では若干表現が異なっていて、「東京湾横断道路建設事業のような本件の発展に関連の深い、公共性の高いプロジェクトに使用するよう配慮するとともに、その監視体制についても検討すること。」とあり、地元事業者には触れていない。

砂利と山砂という違いはあるが、皆さんこの答申を前提に議論しているので一応これに倣う。開発事業が認められるポイントは以下の3点;
(1)本件の発展に関連の深いプロジェクト
(2)公共性の高いプロジェクト
(3)地元事業者の育成に資すること

問題はそれぞれが「かつ」で結ばれるのか「または」なのかである。63年答申だと(1)かつ(2)に配慮、6年答申では(1)または(3)と読める。
(1)~(3)をすべて「または」でつなげば開発事業計画を門前払いする理由はない。「かつ」で結べば羽田空港の拡張が千葉県の発展に資するとは思えない(逆に成田の地盤沈下を招くだろう(注))から、事業認可は困難になるだろう。

上記(3)に関連するものとしてきなだ国有林同業界からの請願書で引用されているのが、6年答申の「その他」にある記述である。
「地元事業者による組織的かつ秩序立った(ママ)計画が樹立するならば、将来的に、地元市と調整しつつ、優良な地元事業者の育成という観点から検討していく」

この部分の直前には、「本審議会において示された基本方針に沿った」という文言があり、結局は上記(1)~(3)の問題となる。

もちろん過去の答申に完全に縛られるわけではなく、さまざまな事情の変化を考慮して検討するのであろうが、過去の答申を変更するのであればそれなりの論理展開が必要となる。

2.ちばぎん総研の調査報告書の位置づけ
「国有林104・105林班開発事業に関する検討調査 調査報告書」という名称である。骨材の定義・分類に始まって、定性的に「富津市では・・・粗目砂は枯渇気味」と述べ、開発事業の経済波及効果を推計し、「事業化はやむをえない」と提案している。

1億2841万㎥の山砂を48.3年で採取したとして、直接経済効果は年間32.4億円、50年間で1621億円で年間雇用創出数は284人と推計している。

※  ※  ※

私の見る限り、欠陥の多い調査である。ここで行われているようなプロジェクト評価分析をbefore/after分析と言う。実施したあとと実施する前を比較するものだから。どんなにひどいプロジェクトでも実施すれば多少の経済効果はあるだろうから、before/after分析はあまり意味がないし、ここで言う経済波及効果は、鬼泪山開発の効果ではなく、羽田空港拡張工事に伴う効果の一部にすぎない。

なぜならば、羽田空港拡張工事に伴って、どこからか骨材は調達される。もしも鬼泪山が開発されなかった場合には、他の地域から骨材が採取される。その一部または大部分が県内から運ばれると想定すると、この開発事業が認可されなくても千葉県内でのある程度の経済効果が生じる。

鬼泪山開発事業の評価を行うには、これを実施した場合としない場合を同じ時間軸で比較する分析(with/without分析と呼ぶ)を用いるのが妥当だ。さらに言えば代替プロジェクト(県内の私有地から採取する場合や、山砂の代わりに何かを用いる場合(できればだが)など)を比較するのが大学生の卒論に求められるレベルである。その点がまずこの調査報告書の信頼性を損なっている。

もう一つは社会的便益費用(social benefit/cost)に関する記述が少ないこと。「「山砂採取」が自然環境に与える悪影響」と「「山砂運搬」が地域社会に与える悪影響」をあわせてたったの1ページである。山がなくなることによる植物・生物相の変化になど思いも及ばぬらしい。騒音・粉塵・振動公害を予防するためのコストは、経済効果から差し引かねばならない。

このように欠陥のある調査報告書をどう位置づけるか。新たな調査を実施するのかという点も大きな論点となろう。そういえば審議会委員には社会科学系の人がいない。プロジェクト評価ができるのだろうか?

(注)このような狭量な議論はしたくないところだが、議論としては持ち出さざるを得ない。

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