鬼の目に泪

キナダヤマという名前からして何かしら由来がありそうと思って調べたら、初めて日本書紀を手に取ることに。

まずは地名辞典で調べる。
「桜井村の北東、鹿野山の西に位置する。・・・日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征に鬼のような賊が涙を流したという所以がある。」

日本武尊は西は九州熊襲、東は陸奥を平定したと伝えられる。西征と東征である。上総地方に訪れるのは東征の途中であるが、古事記にも日本書紀にも「鬼のような賊が涙を流した」というエピソードは見つからなかった。

代わりに面白いことがあった。古事記と日本書紀では東征のルートが異なるのだ。

古事記:
伊勢を出発して相模から上総に渡り、「そこからさらに奥へお進みになって、ことごとく荒れ狂う蝦夷(えみし)どもを平定し、また山や川の荒れすさぶ神々を平定して、都に上っておいでになる・・・」(古事記 (中) 全訳注 講談社学術文庫 208より)
その後足柄坂より甲斐を経て帰っている。

日本書紀:
上総に渡るまでは同じ。「上総から転じて陸奥国(みちのくのくに)に入られた。その時は、大きな鏡を御舟に掛けて、海路より葦浦(あしのうら:房総半島を東に廻った海岸)に回り、玉浦(たまのうら)を横目に過ぎて、蝦夷の住む境に到着された」(日本書紀 上 (日本の古典をよむ)より)
日本武尊は蝦夷を残らず平定して、常陸、甲斐国、信濃を経て帰る。

古事記では上総に渡ってからどの程度奥に進んだかは分からないが、日本書紀ではずいぶんと細かく書かれている。房総半島を東に廻った海岸とは、やけに身近な世界だ。玉浦は九十九里浜だといわれている。

鬼泪山の由来は、記紀には残っていない話があることを教えてくれる。
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夕陽

  • Day:2009.01.30 17:28
  • Cat:魅力
sunset

右から2番目の樹上にある黒いのは、鳥です。

鬼泪山の論点整理

今日は忙しい。

一昨日土石審から帰宅後県保安課に資料をお願いしたところ、今日東京地裁から帰ってきたらもう届いていて感動。で、ざっと拝見して論点を整理する。

1.答申の整合性
直近に開かれた土石採取対策審議会(平成6年3月25日)の答申は、正式には「富津市桜井地先における砂利採取に関する答申」という。前回石井保安課長の発言として引用した部分は「君津地区に賦存している砂利は、本件の貴重な資源であることから、その採取に当たっては、本件の発展に関連の深いプロジェクトに使用するほか、地元事業者の育成という観点からの活用方策に配慮すること」とある。
その前の「富津市桜井地先における大規模砂利採取に関する答申」(昭和63年7月1日)では若干表現が異なっていて、「東京湾横断道路建設事業のような本件の発展に関連の深い、公共性の高いプロジェクトに使用するよう配慮するとともに、その監視体制についても検討すること。」とあり、地元事業者には触れていない。

砂利と山砂という違いはあるが、皆さんこの答申を前提に議論しているので一応これに倣う。開発事業が認められるポイントは以下の3点;
(1)本件の発展に関連の深いプロジェクト
(2)公共性の高いプロジェクト
(3)地元事業者の育成に資すること

問題はそれぞれが「かつ」で結ばれるのか「または」なのかである。63年答申だと(1)かつ(2)に配慮、6年答申では(1)または(3)と読める。
(1)~(3)をすべて「または」でつなげば開発事業計画を門前払いする理由はない。「かつ」で結べば羽田空港の拡張が千葉県の発展に資するとは思えない(逆に成田の地盤沈下を招くだろう(注))から、事業認可は困難になるだろう。

上記(3)に関連するものとしてきなだ国有林同業界からの請願書で引用されているのが、6年答申の「その他」にある記述である。
「地元事業者による組織的かつ秩序立った(ママ)計画が樹立するならば、将来的に、地元市と調整しつつ、優良な地元事業者の育成という観点から検討していく」

この部分の直前には、「本審議会において示された基本方針に沿った」という文言があり、結局は上記(1)~(3)の問題となる。

もちろん過去の答申に完全に縛られるわけではなく、さまざまな事情の変化を考慮して検討するのであろうが、過去の答申を変更するのであればそれなりの論理展開が必要となる。

2.ちばぎん総研の調査報告書の位置づけ
「国有林104・105林班開発事業に関する検討調査 調査報告書」という名称である。骨材の定義・分類に始まって、定性的に「富津市では・・・粗目砂は枯渇気味」と述べ、開発事業の経済波及効果を推計し、「事業化はやむをえない」と提案している。

1億2841万㎥の山砂を48.3年で採取したとして、直接経済効果は年間32.4億円、50年間で1621億円で年間雇用創出数は284人と推計している。

※  ※  ※

私の見る限り、欠陥の多い調査である。ここで行われているようなプロジェクト評価分析をbefore/after分析と言う。実施したあとと実施する前を比較するものだから。どんなにひどいプロジェクトでも実施すれば多少の経済効果はあるだろうから、before/after分析はあまり意味がないし、ここで言う経済波及効果は、鬼泪山開発の効果ではなく、羽田空港拡張工事に伴う効果の一部にすぎない。

なぜならば、羽田空港拡張工事に伴って、どこからか骨材は調達される。もしも鬼泪山が開発されなかった場合には、他の地域から骨材が採取される。その一部または大部分が県内から運ばれると想定すると、この開発事業が認可されなくても千葉県内でのある程度の経済効果が生じる。

鬼泪山開発事業の評価を行うには、これを実施した場合としない場合を同じ時間軸で比較する分析(with/without分析と呼ぶ)を用いるのが妥当だ。さらに言えば代替プロジェクト(県内の私有地から採取する場合や、山砂の代わりに何かを用いる場合(できればだが)など)を比較するのが大学生の卒論に求められるレベルである。その点がまずこの調査報告書の信頼性を損なっている。

もう一つは社会的便益費用(social benefit/cost)に関する記述が少ないこと。「「山砂採取」が自然環境に与える悪影響」と「「山砂運搬」が地域社会に与える悪影響」をあわせてたったの1ページである。山がなくなることによる植物・生物相の変化になど思いも及ばぬらしい。騒音・粉塵・振動公害を予防するためのコストは、経済効果から差し引かねばならない。

このように欠陥のある調査報告書をどう位置づけるか。新たな調査を実施するのかという点も大きな論点となろう。そういえば審議会委員には社会科学系の人がいない。プロジェクト評価ができるのだろうか?

(注)このような狭量な議論はしたくないところだが、議論としては持ち出さざるを得ない。

不正競争防止法違反判決公判

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千葉県土石採取対策審議会

1時半開始で12時から傍聴受付ということだったのでちょうど正午に会場へ到着したらもう遅かった。定員120名のところ、椅子を増やしてすでに150人が会場に着席しており、ロビーにも十数人いる。県の審議会を傍聴するのは初めてだが、なかなか盛況と言っていいだろう。

服装や人相で判断するのはいけないことかもしれないが、どうしても思ってしまう。ジャケットにネクタイ姿の男性は賛成派、普段着の中高年女性や脂っ気のない年配の男性は反対派か。若い男性は業者側の従業員か、学生風の男女数名はなんだろう?卒論のテーマにでもしているのだろうか?圧倒的に少ないのは若い女性、新聞記者にしかいない。自分はどっちに見られているのだろうとも思う。単なる野次馬で来ているわけでもないが、反対しに来ているわけでもない。心情的には鬼泪山が存続してくれればいいなとは思うが、見たこともない山にそんな感情を抱くのも僭越だろう。それよりもむしろ、ひとつの山が消えてしまうか、存続するかという分岐点に立ち会いたいという心情だ。そこでは誰が何をどう考え、どう動くのだろうか?

あふれた人たちが要望したためか、県商工労働部保安課のいきな計らいなのか、さらに7つの椅子が窓際通路に設けられ、それでもあふれた十数人は立ち見を許された。東京地裁が立ち見を認めないのに比べれば遥かにいいと思ってしまうのは去勢された国民だからだろうか。

立ち見のおかげで各委員の顔がよく見えた。会場はフラットなので、後ろの座席に座っていると何にも見えない。マイクを通じた声と、資料を首っ引きで複雑な説明を理解しようと努めるしかない。こちらは資料がないので、前の人のを覗き込む。請願書やちばぎん総研の報告書が添付されている。こんなに親切な資料を出してくれるとはちょっと驚きである。

14名の委員のうち、丸田恵美子東邦大学教授は欠席だった。少ししか調べていないのだが、この人の立場からは国有林の保全という結論が導かれるだろうと思っていたので少々残念。ただ、今日は初回なのでこれまでの経緯や請願の内容といった、「読めばわかる」ことしか議題にはなっていない。

冒頭、会長が選出された。西田孝千葉大学名誉教授の提案で、渡邉勉千葉工業大学教授が会長に、山田利博東京大学教授が副会長になった。これはこんな意味をもつ。

千葉県行政組織条例32条3項にこうある。
「会議の議事は、出席委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは議長の決するところによる。」

前回記したように、15名の委員のうち7名は賛成派と思われるが、西田教授はそこには入っていない。これで反対派はat most7人である。賛成派は、たったひとり切り崩せば勝てる。
ただし、この審議会ができるのはあくまでも「知事への建議」であり、最終的な判断は知事が行う。堂本知事は本件について慎重な姿勢を示しているが、3月の選挙で誰が当選するかによって結果は異なるだろう。

会議の内容は次の通り。
1.事務局から、これまでの土石審の答申内容と今回の請願の内容についての説明があった。
2.上記説明に対して吉本充委員から、「今回の開発計画地域は104林班すべてと、105林班の一部(104の南側部分)である」との指摘があった。
3.請願に、きなだ国有林同業組合の依頼によりちばぎん総研が作成した調査報告書が開発正当化の根拠となっていることから、竹内圭司委員から、同報告書の内容を前提とするのではなく、独自の調査が必要だとの意見があった(少々聞き取りにくかったので間違いあればご教示乞う)。
4.吉本充委員(富津市県会議員)から、次の意見があった。
(1)地下水が枯渇するのではないかという地元の心配がある。以前104林班の開発の際実施した環境アセスメントがあるので、資料として出してほしい。
(2)本件に関する風評として、山砂を洗った水が川から海に流れて汚染されるという話があるが、水は貴重なので循環させて使っているので問題ない。
(3)もうひとつ、山砂を取った跡地に産廃や残土が埋められるという話があるが国有林なのでそれはありえない、「ためにする反対」だ。

次回は現地視察、4月以降になる。

ドセキシン

何やら八百万の神の一つかと思うような言葉の響きだが、さにあらず、実は全く逆で樹木を伐り岩を穿ち山を削ろうとする者である。 千葉県土石採取対策審議会というのが正式名称。

羽田空港の拡張工事のために、富津市の鬼泪山(きなだやま)の国有林から山砂をとらせてくれという「きなだ国有林同業会」(青木達郎会長)からの請願を、県議会は昨年10月に採択した。それを受けて、27日に土石審が開催される。

審議会のメンバーは次の15人。学者4、議員5、業界3が含まれている。4人の自民党議員は今回の請願を仲介している。15名のうち7名はもう山砂採取に賛成ということが明らかだ。

西田 孝(千葉大学名誉教授)
渡邉 勉(千葉工業大学教授)
丸田 恵美子(東邦大学教授)  
山田 利博(東京大学教授)
川名 寛章(千葉県議会議員)自民
吉本 充(千葉県議会議員) 自民
信田 光保(千葉県議会議員)自民
江野澤 吉克(千葉県議会議員) 自民
竹内 圭司(千葉県議会議員) 民主  
三枝 巖(千葉県土砂事業協同組合連合会理事長)
佐々木 敏(千葉県採石事業協同組合理事長)
田中 武秀(社団法人千葉県ダンプカー協会副会長)
星川 正晴(千葉県土地改良事業団体連合会代表監事)  
露崎 守彦(千葉県内水面漁業協同組合連合会理事)
猿田 寿男(千葉県商工労働部長)

昨年10月9日の商工労働企業常任委員会の会議録を見ると、そこでもやはり開けば結論は明らかだという反対意見が述べられているが、入口は閉じずに審議会で議論してもらえばいいという多数派に押し切られた。

県の石井保安課長の発言は興味深い。平成6年の土石審の答申以来、「本県の発展に関連が深く、公共性の高いプロジェクトに使用する場合以外は採取を認めてきておらず」という状況だそうだ。現在はそのようなプロジェクトは存在しないとも明言している。

(以下引用)
※  ※  ※

◯阿部紘一委員 平成6年3月25日に第15回の土石審が開かれたということで、その間ずっと開かれていなかったと思いますけれども、これだけ地元においても大事な問題があるにもかかわらず、なぜこの土石審は開かれてなかったのか。これは行政の怠慢じゃないんでしょうか。お答えください。

◯委員長(木名瀬捷司君) 答弁をお願いします。
 保安課長石井泉君。

◯説明者(石井保安課長) 今の御質問にお答えいたします。
 先ほど委員おっしゃいました平成6年の土石審の答申でございますが、そこで本県の発展に関連の深い公共性の高いプロジェクトに使用するという1つの条件がそのまま出されておりますので、今までそれに該当するものがないというふうに我々は考えて開催しておりませんでした。
 以上でございます。

◯委員長(木名瀬捷司君) 阿部委員。

◯阿部紘一委員 今回の請願の願意を見ますと、本当に地元の中小企業者を含めて業者の方々にも大変大きな関係のある問題であります。これはやっぱり、早速、審議会を開いていただくように私から要望しておきたいと思います。

※  ※  ※
(引用終わり)

阿部委員は「本県の発展に関連の深い公共性の高いプロジェクト」を、いつのまにか「地元の中小企業者を含めて業者の方々にも大変大きな関係のある問題」にすり替えている。

もう少し深入りして、土石審の4人の自民党議員の政治資金を調べてみようと試みた。平成19年度の政治資金収支報告書をネットで見ることができる。きなだ国有林同業会(あるいはその構成企業や社員)から献金がなされていないかと思ってのことである。(立花隆の金脈研究を思い出しますねえ)
結果は・・・挫折。

政治資金規正法では企業・労働組合から政治家個人への献金は禁じられている。ここが田中角栄の時代とは違う。企業が献金できるのは、政党(支部を含む)と政党が指定するに政治資金団体に対してである。
で自民党では政治家、候補者一人ひとりに政党支部を作るような事態になった。全国で7726もの支部があるという。千葉県でも224のうち170が自民党の支部である。各県議専用の支部があるとみて差し支えない。企業からの献金の受け皿である。
例えば銚子市第四支部の収支報告書を見ると、収入欄に「しだ光保県議会議員県政報告会」として902000円が計上されている。この支部は信田議員専用の支部なのだということが分かる。

そのようにして土石審メンバーの地元にある支部について収入欄を見ていったが、関連する企業のものは見つけることができなかった。

それでは政治家個人の資金管理団体のほうはどうだろう。こちらには企業は献金できないので、個人名が載っている(ただし50000円以上)。ところがこれも挫折。4県議の資金管理団体が分からない。資金管理団体の名称には、議員の名前が冠されていることが多い。○野△男後援会のように。ところが4県議の名前を冠した資金管理団体はなかった。今日のところはとりあえずここでストップ。

キシンで連想したものをもうひとつ。

力をも入れずして天地を動かし
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ
男女のなかをもやはらげ
猛きもののふの心をもなぐさむるは歌なり
(古今和歌集仮名序より)

ドセキシンは27日13時半から。先着120名(12時受付開始)。

遺棄化学兵器処理事業詐欺事件第3回公判(被告人質問・情状証人)

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ブロマガって何?

「~についてのお尋ねがございました」

その昔同僚が「おもしろ国会中継」というテレビ番組を企画した。内容はうろ覚えだがスポーツ中継のように解説つきで国会でのやりとりを伝えようとしたものだったと思う。社内ではとても評判が良かったが実現はしなかったようだ。

今は国会の様子をインターネットで見ることができる。衆議院TV参議院インターネット審議中継がその日の生中継はもちろん過去の会議も検索してみることができる。運営会社が違うのか、名称も使用方法が異なるのは面倒だ。こいういう形式的なところで両院の独立性を主張する人がいることは想像に難くない。私見では衆議院のほうが使いやすい。参議院のライブラリは1国会分しか検索できない。今検索しようとするとなんとここ数日分しかないという愚かしさだ。衆議院は2007年8月11日以降のものが検索できる。衆議院の優越か?

年明け早々の衆議院の代表質問を見てみた。
今まで知らなかったのも恥ずかしいが、質問に対する答弁は、首相も、中川財務大臣も、与謝野大臣もみんな決まり文句で始まる。

「~についてのお尋ねがございました。」

質問をたくさん浴びせられる首相などはこの台詞を十数回も繰り返す。そしてその後にちょこっと答えを述べる。

見ていて大変気恥ずかしい思いがする。そこには言葉で相手と意思疎通しようとする意図もなければ説得しようという気概もない。単に官僚の作文を棒読みして儀式を終わらせたいという気持ちしか感じられない。答弁者はこんな決まり文句まで揃いも揃って同じように発言しなければならないと思っているのだろうか。
これをおもしろく中継するのは難しい。揶揄しても何も生まれない。深く分析するには話題の移り変わりが速すぎて、リアルタイムでの解説は無理だ。一段落してから解説するのだろうが、言葉が官僚の作文だからトートロジーだったり表面的なので裏事情や別の観点を解説してくれる人が必要だろう。例えば定額給付金で0.2%のGDP押し上げ効果があるという答弁に対して、本当にそうなのか、その資産の前提となる消費性向は?などというコメントができなければならない。

たった今衆議院予算委員会が始まった。すごい野次である。カメラは野次を飛ばす人を映さない。ここのカメラマンは忍耐を強いられる。ひょっとしたらロボットか。これは報道ではないのだと今更ながら思った。広報である。「おもしろ国会中継」の存在意義は薄れていない。

宇宙の形その1

  • Day:2009.01.09 09:48
  • Cat:
一年の始めくらい壮大なことを考えようというわけで、宇宙のことなどを。

きっかけは昨年から読んでいるこの本。

ポアンカレ予想を解いた数学者ポアンカレ予想を解いた数学者
(2007/06/21)
ドナル・オシア

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以前NHKスペシャルで取り上げていたのでポアンカレ予想が宇宙の形に関することであることは知っていた。その予想とは、

「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」

というもの。これでは訳が分からない。NHKではこんな風に説明していた。

「もしもとてつもなく長いロープを持って、宇宙旅行に出発したとしよう。ロープの端は自宅の門柱にでもくくりつける。ロケットと門柱はロープでつながっている。航行中ロープは宇宙空間に伸びていく。長い長い宇宙旅行の末帰宅して、ロープの両端を引っ張ったときに、ロープが絡まったり引っかかったりせずに回収することができ、そして何回旅行してもするするとロープが回収できれば、宇宙は球と言えるのではないか」

上の本にはポアンカレ予想を理解するヒントとして、二次元空間つまり地球の表面で同様のことを考えてみた場合のことが書かれている。

まだ地球が丸いなんて知らないとして、ひもを持って旅に出る。建物の玄関から入って裏口から出ることや、トンネルを通ったり、地下にもぐったりはできないとする。どういう経路かよく分からないが、無事帰宅できたとしよう。ひもの両端を引っ張る。ヒマラヤの峰々にひっかかったりするかもしれないが、なんとか滑らせればひもは無事に回収できそうである。球面上に這わせたループはすべて一点に縮めることができる。このような状態が「単連結」と言われる。これを三次元空間で考えてみるのがポアンカレ予想と言えるであろう。

もうひとつ興味深いことがあった。地球が丸いのはマゼランの世界一周で実証されたのだと私は思っていた。しかしマゼランはスペインから西に向かい、南米の南端の岬(マゼラン海峡)を回って、アフリカ喜望峰を経由してスペインに帰ったにすぎない。つまり緯度線に沿って一周できることを実証しただけである。実はこれだけでは地球が球だとはいえない。円柱形かもしれないではないか。

マゼランの実証に加えて、一つの仮定を考えてみよう。

「地球上の二次元平面には果てがない。いつまでもどの方向へも進み続けることができるし、元の場所に戻ってくることもある」

この仮定を加えることで、地球=円柱説は却下される。円柱の側面が底面と出会う場所は、「世界の果て」だから。

ではこの仮定を満たす形状は球以外にありうるのだろうか?

円柱の底面同士がくっついたらどうだろう。果てと果てが結びつけばその物体の表面はどこまでも歩いていけそうである。それはどんな形かというと、穴のあいたドーナツである。


torus
このドーナツ状の物体を位相幾何学では「トーラス」という。トーラスの表面には「果て」はない。

トーラス上に住んでいたとして、またひもをもって旅行に出たとする。まっすぐ進んでいって、自分の家にたどりついたとする。そしてその時、自分の住んでいるところは球だと思うかもしれない。でもトーラスは球ではない。そしてどうしてもひもを手繰り寄せることのできない場合がある。ドーナツの輪をくぐって一回りしたときだ。

マゼランが航海中、暴風雨に出会い数十日間も空が厚く雲に覆われていたとしよう。そのときマゼランが通過していたのはトーラスの内側の表面上であり、本来であれば見えるはずの反対側の内側が見えなかった。マゼランがトーラスの外側に出てきたとき天気は回復し青空が見えた。数日前までは頭上に同一平面上に存在するものがあったなんて想像もしなかった。

というようなことが考えられないわけではない。

ポアンカレ予想を2003年に証明したグレゴリー・ペレルマンというロシアの数学者がまた興味深い人だ。フィールズ賞を辞退し、クレイ研究所からの100万ドルの賞金にも関心を示さなかった。現在は数学教師だった母親の年金で生活し、何かを研究しているらしい。
彼は言う。
「フィールズ賞に私は全く興味がありません。証明が正しければそれで十分であり、表彰などが不必要なことは、誰もがわかっていることです。」

さて、終りに古代インドの人たちが考えた宇宙の姿。

indianview
ひもがとじくさりそう。


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